大川×渡邉×磯田×田中×みずき×波多野×徳山×吉見×水元。
そして、TECH-M応援団がひとつになった、あの熱い夏の9時間がまたやってくる——。
「KW 夏の9時間耐久まつり」にテックエムとして参加するようになって昨年で3年目。
あの夏一番のとっておきイベントを楽しみにしていたのは、なにも自分一人じゃないはず。
あの一体感、連帯感を一度でも味わってしまえば、きっと誰でも病みつきになるに決まっている。
そんな、素敵な夏の思い出が今週末、ついに上書きされる。
2016年8月7日午前6時過ぎ。セントラルサーキット正門前にある砂利の駐車場に続々とエントリー車輌が集まった。
欧州車およびクラシックカー&スーパーカーによる9時間耐久レースをメインディッシュに、5時間/3時間/1時間の耐久レース方式走行会、それが「KW 夏の9時間耐久まつり2016」の全貌だった。
もちろん、ユーロカップ同様に真剣勝負のレースを繰り広げるイベントではなく、どこまでも紳士淑女が草レースをとことん楽しむための、いわば最高の遊び場。無事安全にみなが楽しく帰路につき、乗り合わせたメンバーと最高の一日についてわきあいあいと語り合う。そのためにテックエムが掲げた究極目標は、完走だった。
チーム結成時におけるドライバー選考基準はたったふたつだけ。まずチームの一員として9時間耐久レースを、気の合う仲間と一緒に駆け抜けたい熱いハートの持ち主であるか。
つぎに、指定したサーキット走行練習会をサボらず参加でき、かつ真剣に練習へ取り組む熱い気持ちがあるか。もちろんドライビングテクニックありき、という前提こそあったが、鈴鹿ツインで練習さえ積めばセーフティーマージンを保ちつつ周回を重ねることは十二分に出来るようになる。テックエムを応援してくれているお客様と気持ちを同じくして9時間を駆け抜けたい、ゴールした瞬間の歓喜を当日こられなかったお客様も含めて分かち合いたい。そのためなら、順位などどうでもよかった。テックエムに集うすべてのお客様、そして関係者の皆様に、一夏の素晴らしい思い出をプレゼントしたい。その思いが積み重なった3年目、ますます絆は深まったように思う。
参加ドライバーは大川さん、渡邉くん、磯田さん、田中さん、みずきくん、波多野さん、徳山さん、そして吉見さんだった。耐久レースを無事完走するために立てた作戦は、一人一時間を確実に走りきるリレー方式。真夏の車内は想像を絶する熱気をはらむ。疲労困憊するのは当然。そしてバトンを渡さねばという気持ちが緊張を生み、ステアリング捌きを、ペダルワークを、鈍らせる。だからこそ、みずきくんにアンカーを託したことを覚えている。アンカーは特別な意味合いをもっている。
選ばれた光栄感、その次の瞬間から生まれるプレッシャー、よもやのマシントラブルによる完走直前の走行不能、そこから拡がる喪失感、そして申し訳なさ。とてもではないが、サーキット走行1年目のビギナードライバーに頼めるものではない。吉見さんと大川さんだけがこの耐久レースを複数回乗り切った経験者であり、二人にはサーキットに流れる独特の緊張感が薄まり、だからこそトラブルが生まれやすい中盤戦を繋いでもらうことにしたのだ。
一昨年は吉見さんがスタート、大川さんがアンカー。この二人なら無事アンカーを務めてくれるだろうことは分かっていた。だが、あえて参加2年目のみずきくんを選んだのは、彼に思い入れがあったからだった。そう、クルマ好きな父上と彼の親子関係がとても自分と似ていたのだ。ましてや父上は一昨年主催したオートファッションインプ誌におけるスタイルアップコンテストにて、会場選びから撮影終了後の掃除まで、フルサポートしてくださった大恩人。
正直に書くが、とても彼を普通のお客様と見ることは出来ない。彼は特別な存在だった。ただし、彼がアンカーであることはぎりぎりまで隠していたことだけは、ここで謝っておこう(笑)。残念なのは当初ドライバーとして参加してもらうはずだった尾崎さんが仕事の影響で参加できなくなったこと。そのためチーム監督の僕も走った。昨年はお客様だけでゴールを切ってもらうつもりだった。が、よくよく考えれば、それだけまた今年の楽しみが増えたということだ。
月4回の練習走行を雨の日も嵐の日も2ヶ月。最低でも一人2回は鈴鹿ツインサーキットを経験している。練習時に口を酸っぱくしてアドバイスしたのは、コーナー手前でしっかりと減速する、曲がる・止まる・加速する、をメリハリ良くシンクロさせること、そして優しくシフトチェンジすること。とりわけシンクロ方法については丁寧なアドバイスを送った。
ノブを握る力を柔らかく、手を添えるように握る、ニュートラルに一度戻してからシフトする。また、ブレーキングはABS機能が働くまで大胆かつ繊細に踏み抜く。また、ブレーキを抜きながらステアリングを操舵すること。ブレーキを残すことでしっかりとタイヤに荷重が乗ったままコーナーリングすることが出来るからだ。その結果、クラス5位に食い込む素晴らしい完走劇が生まれた。
渡邉さんは私より若く、仕事もプライベイトも充実しているリア充。だが、礼儀正しくて明るいその性格が元気な走りを生む素晴らしい乗り手。また、今のテックエムがあるのは磯田さんのおかげといっても過言ではなく、こと走りに関してはワインディングでは到底叶わないほどのテクニックの持ち主。実際、昨年参加したメンバーのなかで一番時計をかっ攫っていった。
サーキット経験豊富な田中さんは恐れを知らない果敢な走りこそが身上。ただ、普段はスーパーカーを操縦しているので旧い318isには少々手こずったかも知れない。そして波多野さんはタイヤまわりのサポートをお願いしている強い味方であり、昨年のレースカーのアライメントやタイヤ交換を一身で引き受けてくれた恩人。ご自身のスキルと経験の向上を目指して参加してくれたことを覚えている。最後は徳山さん。イベントでサーキット走行の醍醐味を知り、テックエムでカスタマイズする歓びを知り、耐久レースに参加する臨場感を楽しんでもらえた。
途中、あわやという局面を迎えたこともあったが、それでもチーム一丸となって危機を乗り越えた。数度におよぶセーフティカーの介入により、担当走行時間が大幅に減りピットイン回数ばかりが増えたものの、誰に言われるでもなく応援団が積極的にピット作業を手伝ってくれた。メインストリートに飛び込んでくると、ドライバーに心の底からエールを送ってくれた。そんな応援団の肩や頭には、残念ながらおまつりに参加できなかったお客様がプレゼントしてくれたテックエムのロゴ入りタオル。人一倍多い応援団の声援があったからこそ、過酷な夏の9時間耐久レースを乗り切ることが出来たのだ。ゴールを切った瞬間、歓喜が生まれた、誰からともなく肩を抱き合った、ウォーターファイトが始まった。この一体感、連帯感が大好きだ、テックエムを慕ってくれるすべてのお客様が大好きだ。だから、チーム名は「テックエム みんなで耐久318is」。
今年もあの歓喜をテックエムを応援してくださるすべてのお客様と味わいたい。